逆境乗り越えパラリンピック出場目指す 障害者アーチェリー 警視庁月島署の大山晃司さん 10/27(金) 18:35配信

2020年・東京パラリンピック出場を目指す、障害者アーチェリーの大山晃司さん=東京都葛飾区(春名中撮影)(写真:産経新聞) 警視庁月島署会計課の大山晃司さん(26)=千葉県出身=が、28日から愛媛県で行われる「第17回全国障害者スポーツ大会」(健常者の国体に相当)のアーチェリー競技に都代表として出場する。大学生時代に事故で頸椎を損傷し、大きなハンディキャップを負ったが、警察官へのあこがれを胸に厳しいリハビリを乗り越えた末、車椅子アーチェリーに出合った。次に目指すのは警視庁職員初となるパラリンピック出場だ。
■「人生終わった」
首が熱い、痛い−。大学3年生だった平成24年9月、体操部での練習中に誤って首からマットへ転落。直後、首から下が全く動かなくなり、タコのようにぐにゃりと力が抜けた。「人生終わった」−。思わずそんな言葉が頭をよぎった。
手術後、主治医が「一生この状態だと覚悟した方がいい」と告げるのを、のどに管が通されたまま無言で聞いた。幼少時から体を動かすのが大好きで、中学と高校ではサッカーにも熱中。到底受け入れられない現実だった。
2、3カ月はふさぎがちだったが、別の医師から「受傷後1年のリハビリでその後が大きく変わる」と聞き、「死ぬ気でやってみよう」と生来の負けん気が蘇った。作業療法士らとのリハビリや自主練習を繰り返す日々。ほんの少しずつだが、体の動く範囲が広がってゆき、希望が湧いた。
■警察官の夢も力に
「警察官になりたい」という中学生時代からの夢もやる気に火をつけた。きっかけは下校途中に警戒中の警察官に話しかけられたこと。「それまでは怖いイメージだったが、その警察官がとても親切で印象に残って、なりたい職業になった。体が動くようになれば、もう一度夢を追えるかもしれないと思った」
リハビリや自立支援に向けた訓練を終えて、27年、ついに念願の警視庁の警察行政職員採用試験に合格。かつて思い描いた姿とは少し違う形だったが、警察学校への入校日に「いよいよ警視庁での生活が始まるんだ」と喜びをかみしめた。
障害者アーチェリーに出合ったのは28年1月ごろ。やりたいスポーツを探しているときに、スポーツセンターのアーチェリー場で車いすで競技を行う選手を目にした。インターネット上で見つけた動画では、手が使えない選手たちが口や足で弦を引いて競い合っていた。「自分にもできるはずだ」と胸が高鳴った。
■全国大会でも優勝
同年4月ごろから本格的に競技を始めたところ、めきめきと上達し、今年9月には障害者アーチェリーの全国大会での優勝も果たした。今回の障害者スポーツ大会では都代表。「他県の選手たちとも交流したい」と期待が膨らむ。
延長線上で目指すのは、2020年東京パラリンピックへの日本代表としての出場だ。これまでの結果も、これからの努力も他選手に負けない自信を持っている。「活躍して自分や月島のことをもっと知ってもらいたい気持ちもある。パラリンピック。絶対出ます」と力強く宣言。アーチェリーの試合は29日、今治市宮窪石文化運動公園で行われる。(菅野真沙美)