米大統領選の行方左右するサッカー・ママ(soccer mom)? 読売新聞(ヨミウリオンライン) 8月24日(金)10時35分配信
ロンドン五輪のサッカー女子決勝で、日本の攻撃を阻む米国チーム アメリカの大統領選が11月に迫りました。民主党のオバマ大統領と共和党のロムニー前マサチューセッツ州知事の一騎打ちになった選挙戦。その行方を左右する要素の一つと言われているのが 、soccer mom(サッカー・ ママ)と呼ばれる女性たちの動向です。
サッカー・ママとは、アッパーミドル(中産階級の上位層)に属し、郊外の一戸建てに住んでいて、学齢期の子供にサッカーを習わせている教育熱心な白人の女性を指します。
この言葉が広く使われるようになったのは、もう16年も前、1996年の大統領選でした。民主党のビル・クリントン大統領はこうした女性たちの支持も集め、再選を果たしました。
話は変わりますが、ロンドン五輪の女子サッカーで優勝した米国チームの選手の多くは、こうしたサッカー・ママに育てられた娘さんたちでした。ほとんどが白人である彼女たちの姿を見ると、恵まれた家庭の出身である感じが伝わってきます。
男子サッカーの選手たち、特に南米やアフリカの多くの選手たちにとって、サッカーが貧困を脱する手段になっているのとは対照的です。
話を戻しますと、このサッカー・ママという言葉は2000年代に入るとあまり聞かれなくなります。
それに代わり、04年の大統領選では security mom (セキュリティー・ママ)、08年の大統領選では Walmart mom (ウォルマート・ママ)という言葉が話題になりました。
セキュリティー・ママは9・11やイラク攻撃などでテロや戦争の問題に敏感になった母親たち、ウォルマート・ママは不況や失業率上昇で財布のひもを締め、安売りスーパー「ウォルマート」を利用する母親たちのことを指します。
今回の大統領選では再びサッカー・ママが注目されていますが、それはなぜなのでしょうか。
米議会専門紙 The Hill (ザ・ヒル)の電子版は The Soccer Mom Revival (サッカー・ママの復活)という見出しの記事の中で次のように報じています。
「サッカー・ママは今回の選挙の行方も左右する。メディアは(セキュリティー・ママやウォルマート・ママなど)新しい物語を創り出したがってきたけれど、現実には、サッカー・ママがどの選挙でも重要な役割を果たしてきた」
彼女たちは選挙のたびに投票先を変える浮動層で、近年の大統領選の帰趨(きすう)に大きな影響を与えてきたというのです。
今回の選挙では特にロムニー氏が彼女たちへの働きかけを強めているようです。英紙フィナンシャル・タイムズは7月、以下の見出しの記事を載せました。
Romney reaches out to suburban "soccer moms"
ロムニー氏、郊外のサッカー・ママにアプローチ
オバマ大統領も手をこまねいてはいません。もともと大統領はミシェル夫人とともに女子サッカーの大ファン。2人の娘さんもサッカーを習っており、ミシェル夫人はいわばサッカー・ママの仲間です。
大統領はロンドン五輪で米国チームが3連覇を果たすと、ツイッターに自身で投稿し、「とても誇らしい」と偉業をたたえました。当然のことですが、選挙戦も意識していたはずです。
もちろん、大統領選の行方を決めるのはサッカー・ママだけではありません。ただ、今回は大接戦が予想されるだけに、浮動票と目される彼女たちの取り込み合戦は激しさを増していくことになりそうです。
(読売新聞編集委員 大塚隆一)